武田薬品工業との第1回住民対話集会(08.12.16)を終えて

 

鎌 倉 市   齋  藤  勝  彦

○ 我々が武田に求めているのは、科学的根拠に基づく説得的な説明である。

 もし、武田が住民の理解に誤りなり,いき過ぎがあると思うなら、何故,実状を一番知っている筈の武田が、基礎的データ(注)を開示し、積極的に説明しないのか。今の態度を武田が取り続けている限り何回この種の対話をやろうとも住民の不安は永久に払拭されないばかりか不信が募る一方である。

(注)武田は飼育実験動物のおおよその数すら何度要求しても明らかにしない。かかる武田の態度は、会社のイメージにとってもマイナスとなるに違いない。住民の精神的ストレス(ストレス自体もバイオ災害)を軽視し、「人権侵害」を行う会社としての評価が世間に定着することになるだろう。

○ 武田側の説明者、医薬研究本部の橋口昌平氏は、HEPAフィルターの性能について従来は99.97%の補足率とし、病原菌(細菌、ウィルス、DNA・プリオンなど生物の構成物、また新生物)の0.03%の外部漏出を認めていたが、最近(12月7日の 藤ヶ谷の説明会以降)は、絶対出ないと言い切る態度に変わっている。

 その根拠は、WHO の実験指針(第3版)の記載のようだが、英文を仔細に点検すると、そのパラグラフの冒頭において0.3μm粒子について99.97%の補足率であることに依然として言及している他、効果的に捕捉しうるのは既知(known)の病原体であり、また「排気ガスは無菌(原文no microbe)であることが保証されている。」の文章は専らmicrobe(=細菌または微生物)を対象に書かれており、生物とも非生物とも解釈されるウィールス・ファージ、またDNA/プリオンなど生物の一構成物、さらにアレルギー物質などすべての病原体を含んでいるとは言いがたい。微生物以外の病原体はもっと捕捉しにくいとみられ、従って橋口氏の口ぶりをそのまま信ずる訳にはいかない。

 もし病原体/新生物の漏出が絶対ないと言い切るのであれば、何故通常の空調のようにビルの中を循環させないのか。この場合は膨大な量の即時の強制排気は無く、空調のエネルギーコストを桁違いに節約できるのではないか。

 橋口昌平氏の主張が正しいのであれば、武田は住民に対する保証の意味もこめて、「漏出は絶対にない」旨、代表権者の文書を提出願いたい。

 

○ 武田の答弁が、根拠を示さぬ無理な恣意的発言または口先だけの努力表明の繰り返しに留まり続けるとすれば、武田自身も住民の安全を保証する自信がないと見做さざるを得ない。

 現在の湘南の立地は抵抗力の弱い病人を抱える大総合病院にもろに隣接、周辺には保育園、幼稚園、小・中学校、公私あわせて老人ホームなどの福祉施設が、湘南という土地柄を反映しことのほか多い。従って、欧米では住宅地立地それ自体が既に問題視されるのだが、武田の研究所にはそれ以上の危険があると考えられる。その意味では最悪の立地といえるかもしれない。

 万が一の不測の事態が起こった場合、住民の安全を守り切る自信が無いのであれば、武田の経営陣は、この際、立地を再検討するのが当然である。世界でも最大級の規模とみられる研究所をかかる立地に建設することは非常識としか言いようはなく、経営陣は世間の指弾を受けぬよう倫理観を踏まえて早急に再検討すべきである。