住民の不安を払拭する努力を!

 

鎌倉市議会議員  三   輪   裕 美 子

 
<公述項目>


P3実験施設への不安

@防災上の不安
Aヒューマンエラーへの対策
B未知なるバイオ技術への不安


安全性の確保

@研究内容を明らかに―企業秘密より安全性の確保を
A動物焼却炉の再考
B情報公開
C3者協定の締結について
 


P3実験施設への不安

@防災上の不安   
 
大地震が何時来るかもしれない中、液状化が懸念される新研究所は、免震構造という計画ですが、鎌倉市域の端にある既存建物2棟は危険物倉庫になるというが地震対策はありません。耐震構造にすべきです。また、「阪神大震災の時に神戸大学等での漏出事故は無かったから安全だ」と武田薬品はしているが、実験室の壁とダクトの接合部分にずれが生じることにより、漏れることはあり得ます。HEPAフィルターの破損も起こりうるかもしれません。あらゆる自体を想定した対策を求めます。
Aヒューマンエラー
千葉県のRI施設から放射性物質イリジウムの容器を持ち出し、横浜市の川に捨てるという事件が最近ありました。また、大阪府高槻市のJT医薬研究所では、研究者が放射性同位元素を故意に持ち出し、JR高槻駅の改札口にばら撒いた事件を起こし、また、同研究所が発がん性の有害物質を違法に下水道に垂れ流し隠蔽していた事が判明しました。更に、今年の5月には神戸大学医学研究科で、遺伝子組み換え操作菌の違法投棄が6年前から常態化していたという調査が発表される等、人的な事故が目に付きます。研究者の教育だけでなく「社員の倫理規定」が必要と考えます。
7月10日、JR久里浜駅の近くの核燃料工場で、作業員が 蓋を閉め忘れて作業を行ない、ウラン粉末を浴びたという事故 も起きています。
B未知なるバイオ技術への不安
 
遺伝子組み換え技術は、これまで存在しなかった新しい生物を作り出すことを可能にする技術です。実験中の組み換えDNAを研究者が吸い込まないよう、安全キャビネットで実験を行ないますが、最終的には排気は実験室からHEPAフィルターを通過して外へ強制放出されるわけで、周辺住民の安全を確保しているとは言い難いです。武田薬品は、「法律に従えば、周辺住民に対するバイオハザードの危険性は無いと判断している」としていますが、小田原市でも05年明治製菓の微生物資源研究所の実験施設から遺伝子組み換え微生物の培養液が異常発砲し、フィルターを破損し敷地内に漏出した事故がおきています。「絶対安全とは世界中誰も言い切れない」と微生物研究者もおっしゃっています。万が一のことを想定した対策が必要です。
 
また、「法に則り遵守する」と武田薬品は見解を出しているが、6月3日の県環境影響評価審査会では住民の不安を取り除くためには、法以外は対処しないという姿勢をとらないほうが良い」という専門化の意見が複数ありました。
「法で規定しているのは最小要求であり、考えうる安全対策を行なうよう」との国立感染症研究所バイオセーフティセンター室長の杉山氏からアドバイスもありました。是非、周辺環境への配慮を行ない十二分な安全対策を求めます。


安全性の確保

P3実験施設の設置をするのであれば、武田薬品は誠意を持って住民の不安を払拭し、以下の安全性を確保すべきと考えます。

@研究内容を明らかに
取り扱い微生物の明確化
 
「現在P3レベルの実験の計画はない」「今後もP3レベルを使った遺伝子組み換え実験は実施しない」としています。しかし、「長い将来を考えると、製薬会社の社会的責任として、P3レベルの病原性微生物を利用した薬効試験を実施したい。」としています。
「神奈川県バイオテクノロジー環境安全管理指針」には取り扱い生物材料名と環境安全情報データの有無だけの簡単な記載、DNA組替えの作業実施状況も該当項目にチェックするだけの簡単な記載のみとなっているので、拡散防止措置(封じ込めレベル)の根拠が明確でない。茨木市の彩都バイオ都市の指導指針では、研究内容と遺伝子組み換え生物の名称が詳細に記載されているので、拡散防止措置が適正かどうかの判断が厳正にできます。神奈川県の届出表も見直していただきたいが、武田薬品は研究内容を明らかにすべきです。
企業秘密より安全性の確保を
 
また、研究内容を秘密にする必要はないはずです。茨木市の例は民間にも情報提供を義務付けることが可能だという証明です。民間なので企業秘密の観点から情報公開が難しいというが、本当に難しいのでしょうか。パテントに関わるような研究の詳細でなくても、安全性を判断できる内容を提示すべきです。
武田薬品には、是非、詳しい情報を公表していただき、住民の不安を払拭してもらいたいと要望します。
 
JT医薬研究所(高槻市)の先に紹介した2つの事件を受け、翌02年大阪高裁は、「企業秘密より、人の生命保護の必要性」を認め、情報公開すべきという判決を出しました。しかし、武田薬品の出した見解書では「判決の詳細は知らない」という回答でしたので、是非、他社の事故等の事例も研究して予防策の参考にしていただきたい。
(井上薫氏のジュリスト掲載論文「吹田市遺伝子組換え施設規制条例の法律問題」の法的解釈を参照)
1.「(事業者の)研究の自由は、学問の自由の一部として憲法23条の保障を受ける」が、「研究が周囲の人びとの権利を侵害する可能性を有するとなれば、もはや内面的な精神的自由のような高次の保障を当然視することはできず、他人の権利の侵害の可能性に照らして相応の制約はやむをえない。」
2.「事業者の営業の自由は、職業選択の自由(憲法22条1項)および財産権の不可侵(同29条)の両者に基礎を有する複合的人権であり・・安全性の検知から同研究に制約を受けることは、すなわち営業の自由を制約することにつながる」が、「安全性への疑問が理論的に根拠のあることを前提とすると、この制約はやむをえないものと評価される可能性が高い。」)
A動物の焼却炉の再考 
 
「環境影響予測案の意見書に対する見解書」では「現有施設におけるダイオキシン排出データや臭気データをもとに問題なし」「現有施設での実績から安全だ」との説明ですが、住民も病院関係者も不安に感じています。更に、これまで武田薬品が取り扱ってこなかった病原体も扱う可能性は否定していません。これまでの環境アセスの基準では測りえない危険性のある物質が焼却炉から排出される可能性は大きいと考えます。
 
住宅街や病院や老人施設の近くに、実験に使用した動物の死骸を焼却する施設を設置するのは問題です。焼却処理による環境影響が危惧されることから、適正な処理業者に委託して適正な処理を行なうよう検討を要望します。
 
大量の動物を実験に使用する武田薬品の炉は150キロ/時の処理能力(3.6トン/日)なので、週に2〜3トンは処理するのではないかと想像できます。
1炉は故障時対策ということを聞きましたが、200キロ未満は一般廃棄物処理施設設置許可が不要ですが、2炉あわせて300キロ炉規模という届出をすべきで、どうなっているのか確認したい。
茅ヶ崎市にある県の衛生研究所も、新宿区の国立感染症研究所でも、冷凍保存して輸送し、板橋区の業者に委託しています。吹田市は岐阜の業者に、高槻市は三重県の業者に、千葉県の昭和電工も委託しています。県をまたがると、搬出時と搬入時に許可が必要となり、手続きが面倒だという事も聞きました。焼却炉の仕様、管理体制、住民に対し実験開始後の環境安全情報の開示などの明確化と排気の確実な処理についての説明責任はどうなっているのか示してほしい。
武田薬品は個体数については未定というが、実験動物について詳細な種と数の届出と、審査を行なっていくのか、その審査は第3者の入ったものを考えているのか。現有施設での内規はどうなっているのか提示すべきである。
1日6時間稼動として1トンという試算をした公述人もいらした。
B情報公開 
 
現有施設の内規全てを提示すべきである。武田薬品は、モニタリングの結果公表については見解書の中では明確にしていない。市に対しては定期的な報告を検討するとのことだったが、住民に対しては公表を考えないという。
県の衛生研究所は、結果公表は市民も入った安全委員会でチェックされ、立ち入り調査も可能としていて、研究員の気持ちの引き締めにも繋がっているというお話しも聞きました。
P3排水の放流時の菌のチェック等、法に上乗せしたチェック体制の確立と、市民への公表、立ち入り調査、更に、研究内容の変更の際には住民への説明を行い意見が反映するよう、等々2重3重のバイオセーフティ事故防止策を行なうようにすべきです。
C住民・市・業者の環境安全協定の締結の働きかけ
 
武田は「両市とは結ぶ事を考えているが、住民とは考えていない」と言っています。具体的な約束を文書で確約してもらわないと、住民の不安は解消しません。
そこで、これまで玉縄の町内会と友好関係を築いてきた武田として、既に決まった事を説明するのでなく、住民の不安を受け止め協議して決定していく姿勢が必要です。「住民の不安に対し、もっと積極的に対応すべき、リスクコミュニケーションを!」と県審査会委員も要望していました。是非、市との2者協定ではなく、住民を入れた3者協定を結ぶよう願います!
今後も広く住民とともに歩んで行って頂きたいと思う。疑問に対して丁寧に説明し、話し合いを重ねて東洋一安全対策に配慮した研究所になるようにしてもらいたいものです。
大船フラワーセンターのばら
 
(この意見は、2008年7月5日の公聴会で述べられた内容に加筆のうえ、三輪さんご自身のホームページ「鎌倉市議 みわゆみこ」に掲載されていたものを、転載させていただきました。)