なぜ、危険な施設を人口密集地に?

 

     

 
 私は、藤沢市村岡東一丁目に住んでいますが、私どもの村岡東一丁目は、今回の武田薬品研究所建設予定地の半径600メートル以内に位置しています。

 JRの東海道本線より北側の藤沢側に限定して、半径約1キロメートルの範囲で武田薬品に近隣する町名や住民数を調べた結果が、以下の数値です。
これだけ多くの住民が軒を並べ、その中に保育園2園、幼稚園3園、小学校2校、中学校2校、ケアハウス1棟が点在している人口密集地です。
<武田薬品に隣接する町名と住民数>
村岡東1丁目  752   村岡東2丁目   971   村岡東3丁目 1487
村岡東4丁目  867   渡  内      59    渡 内1丁目  910
渡 内2丁目  1114    渡 内3 丁目  502      渡 内4丁目  979
弥 勒 寺   229    弥勒寺1丁目  1817      弥勒寺2丁目  605
弥勒寺3丁目  2304     弥勒寺4丁目   1300   (合 計)     13896
<教育施設>
保育園3園(高谷保育園・村岡保育園・藤が岡保育園) 児童・職員合計   382
幼稚園2園(村岡幼稚園・藤が岡幼稚園)         児童・職員合計   532
小学校2校(高谷小学校・村岡小学校)           児童・教職員合計 1119
中学校2校(村岡中学校・藤が岡中学校)         生徒・教職員合計 1233
                                     (合 計)     3266

 ご存じのように、去年の春ごろ、武田薬品が研究所建設のリーフレットを戸別配布しましたが、武田薬品がそのリーフでは実態を明確にせず、実はP3施設と呼ばれる生命体に非常に有害な実験室を含む研究所を建設しようとしていると、タウン情報誌によって初めて知った次第です。
研究所(実験室)の実態を当事者である武田薬品からではなく情報誌で知ったこと、また、このような人口密集地に危険な実験室を建設するという武田薬品の住民無視の企業姿勢に憤慨し、実験室予定地の近隣に生活する者として、今回の研究所(実験室)計画に大いなる懐疑を抱き、公述人に応募した次第です。

 生活人としての視点から、空気、ごみ、水にかかわる不安について、以下に述べていきたいと思います。

 まず空気についてです。皆さんは、料理中にうっかり鍋を焦がした体験はおありじゃありませんか。私はあるのですが、うちのように狭い空間で、なぜ焦げた臭いや煙に気がつかなかったのでしょう。それは換気扇をつけていたからです。そのときもちょっと玄関に出て異臭に気づき、あわてて台所に戻り、惨状を発見といった次第でした。

 実験室からの空気は色も臭いもなく、一方的に実験室の外に排出されるのでしょうか。強力フィルターを設置して、実験用の菌が外部に漏れないように設計しているということですが、100パーセント漏れてこないのでしょうか。あるいは、わずかでも、毎日、毎日、毎日、毎日漏れてくるのでしょうか。アスベストによるひどい被害を連想し、非常に不安です。

 また、家庭でも換気扇をお掃除しますが、実験室ではフィルターを交換したり、換気扇を掃除したりしないのでしょうか。掃除や交換時にフィルターに付着していた菌を、近隣住民である私たちのところに流さないための対策は予測評価書案の何ページに説明されているのでしょうか。もちろん、実験室の建物は姉歯設計事務所以外で構造計算されたと思いますが、岩手・宮城の大地震の例のように、万一、実験室に隣接する藤沢・大船線が陥没、隆起すれば、実験室に亀裂が入って倒壊する可能性も考えられます。そうなればフィルターがずれたり外れたりすることになるでしょう。毎日微量の菌を私たちが呼吸する空気に排出するばかりか、災害時にどっと大量の菌が近隣に放出された結果、その何年か後に武田薬品の重役たちが菌放出の事実を認め、「船場吉兆」よろしく、雁首下げて謝罪しても、被害を受けた私たちが既に発病していては後の祭りです。

 災害時や実験室の事故に備えて、近隣住民の安全のために緊急避難場所は確保されているのでしょうか。避難場所への住民の輪送体制など、システム化されているのでしょうか。そもそも事故が起きた際に、即刻、住民に警報などで知らせる装備については予測評価書案の何ページに明示されているのでしょうか。私たち近隣住民は人体実験用のモルモットではありません。今回の研究所建設計画が、研究員並びに近隣住民の安全を最大限に考慮した計画であるのか大いに疑問を抱き、不安ばかりが募っています。

 次に、ごみについてです。藤沢市が分別ごみ収集を開始して以来、ごみ袋が裂けて中身が露出した体験が私は2回あります。皆さんは、いかがですか。
  実験室より廃棄されるごみには、研究者が日々使用する使い捨てのマスクや帽子、手袋、靴下などを含むものでしょう。また、かなりの量の、実験に使用される動物たちの死骸である可燃性の廃棄物であるようです。それらは焼却されて、その煙が近隣へ飛び散るのでしょうか。その煙の中に有害な菌は全く含まれないのでしょうか。焼却しない廃棄物は業者に収集委託するのでしょうか。収集される廃棄物は、私たちが使用している藤沢市指定のプラスチックのごみ袋を使用するのでしょうか。その袋は万一の破損を予防するために、二重、三重の構造になっているのでしょうか。また、それらの廃棄物は、ドラム缶などの密封容器に入れて搬出されるのでしょうか。ごみ袋破損の体験を持つ身として、ごみと、その廃棄方法に危惧を抱いています。

 また、廃棄物を処理する業者の安全は、どのように確保されているのでしょうか。たとえ業者がハリウッド映画の「E.T.」に出てきた科学者のように全身を抗菌服で覆い、廃棄物は密封容器で輸送されると仮定しても、万一、一般道でこれらの廃棄物輸送車が追突され、菌を含んだ実験室の廃棄物が路上に散乱し、偶然居合わせた不特定多数の人々が被害に直面することを避けるような対策は予測評価書案のどの項に論じられているのか、知りたいものです。
 この予測評価書案のはじめに「湘南の地は魅力的で外国人の研究者を招へいしやすい」とありましたが、外国人を魅了する前に、実験室近隣の住民の安全を第一に考えた予測評価書案を再提出して、近隣住民をまず魅了すべきではないでしょうか。

 最後に、についてです。実験室は洗浄、燻蒸処理されると予測評価書案に記載されていますが、洗浄に利用された排水の中の菌は、どのように処理され、その安全性が説明されるのでしょうか。
 みそ汁ではありませんので、お湯を足して薄めれば済むというものではないでしょう。排水管の先は江ノ島で、海水浴を楽しむ人々や名物のシラスが汚染されたり、江ノ島の漁師さんが実験室由来の発病の風評で生活の危機に直面することが予想されます。被害を未然に防ぐための排水処理方法であるのか、再検討する必要があるでしょう。

 古い排水管が破損して地盤沈下の原因になっていると7月2日付の朝日新聞が報じています。実験室の配管が古くなって破損し、近隣住民の土壌に実験室で日々取り扱われている菌が蓄積することのないように安全を保障するシステムを確立し、万全の管理体制を近隣住民に示すことが武田薬品の企業としての責任であると考えます。

 以上、研究所計画予定地の近隣に生活する者として不安と懐疑を述べてまいりましたが、公述を終了するに当たり、今回の公聴会の公述人募集の記事を市の広報に載せなかった広報担当者並びに総責任者である海老根市長の市民の安全軽視の姿勢に猛反省を促すとともに、安全な市民生活を優先するために実験室への公的な査察を義務づけ、市民の安全保障システムを確立し、提示することを要求します。市民の安全を保障しかねるようなら、今回の計画を市長は許可すべきでないと考えます。

 庭のバラの花が一段落して、百合の甘い香りが漂うこのごろとなりました。この現在の環境を、せめてこのまま孫の世代に手渡していきたいと念じつつ、公述を終了したいと思います。

大船フラワーセンターの花々
 
(本稿は、2008年7月5日に行われた公聴会での発言に加筆していただいたものです。)