武田薬品は住民に十分な説明を

 

鎌 倉 市   平  倉     誠

 


鎌倉市植木に居住している平倉誠です。
今回の新研究所計画は製薬を主としていた以前の湘南工場と違い、従業員も数倍の1,200人と増え、事業内容も大阪の淀川区十三(じゅうそう)と茨城のつくば、その両研究所を移転させるという大幅で質的な変更予定でございます。この変更が近隣住民にとっていかに衝撃的であったか、このことを武田薬品工業も神奈川県のアセスの審査会も、よく知ってほしいと思います。


 武田薬品の説明は不十分

2月のアセス住民説明会は、工場の解体と新研究所の建設事業に重点が置かれて、事業内容に関する病原菌の取り扱いや動物実験などの部分は付け足しにしか扱われていませんでした。説明会での質問や25通の意見書によって問題を知り、周辺住民の生活環境に及ぼす影響が重大なことだと理解し、心配が広がったというのが実際の経過でした。
あたかもテレビの画面がパッと変わるのと同じように事業転換する。膨大な費用と時間を投入する事業であっても、会社にとっては、ごくありふれた事業転換の一つでありましょう。しかし、住民には、生活する場面で起きつつある大変な脅威に映ります。

 大規模な大気汚染の可能性

武田薬品の計画の怖さは、研究所が大規模であるということです。立ち並ぶ研究所の各棟から出る排気ガス、それは我々住民や、あらゆる生き物に必要な空気と呼べるものなのでしょうか。これにたとえわずかでも病原菌など汚染物が運ばれて出てくる可能性があるなら空気と呼ばないでしょう。その排気されたガスがどう流れてくるか、市民は排出量と風向きをどう考えればよいというのか。
研究所の排気施設に事故があったときだけ配慮すればよいことなのでしょうか。それとも日常的に、例えば鎌倉市植木の私の住宅を例にするなら、研究所のある西方面からの風のときは窓を閉めてエアコンで過ごせという意味のことなのか。そして、近接して住んでいる方は、もっと大変です。先ほど、排ガスがよどむことも心配されましたけれども、実験室から排気される、あるいは焼却炉から排出されてくる空気が滞留することは十分可能性があります。排気は果たして正常にして空気と同じようにして排出するのだと、もし武田薬品が言われるのであれば、空気は循環して使うべきです。大量の排気ガスが住宅地に流れることは大きな迷惑です。
実験室への空気の供給、そして室内のP1からP3の各レベルのキャビネットへの空気の供給、そして排出するガスは空調設備をどう流れるのか、(すべての実験はキャビネット内で行うということですが)、キャビネットを出たガスは、どのようにして浄化され排気されるのか、もっと具体的に説明してもらう必要が、住民にはあります。
それにしても膨大な排気量で、その排気量の半分が実験キャビネットからの排気だとしても、台数に換算して、どのぐらいでしょうか。500台から2,000台ぐらいの間ではないかと計算例があります。


 排水をめぐって

環境のことは排水についても言えます。研究所全体で一日に約4,000立方メートルという大量に取り込む水は、わずか1回の使用で下水などに排水してよい量とはとても思えません。再循環、再利用を繰り返すのが、普通の工場ではごく当たり前でありましょう。空気も疑問だらけ。水も疑問だらけ。これをどうして物理的封じ込めとおっしゃるのか、とても理解できません。


 新研究所の周辺は人口密集地

新研究所の周辺は人口密集地です。武田側は、大阪の淀川区十三は同じように人口密集地だと言われ、また、これまで病原体が住民の地域に漏出する事故は発生していなかったと説明しますが、それは漏出がなかったということを実証するものなのでしょうか。それとも、0.00何がしは漏出したが実際の被災者は出なかった。確実に因果関係が証明される被災者はゼロであったということでしょうか。
実績があるということですから、実績について合理的な説明をなされば、住民にも理解の余地があるでしょう。しかし、先月までアセス縦覧された会社の見解書にも2月に行われた4回の説明会でも、そのような説明はありませんでした。


 武田薬品は住民に十分な説明を

大阪市淀川区十三の研究所が、そして、つくばの研究所が、実績を積んだ充実した設備と研究体制であるならば、その設備並びに体制を住民によく説明し、質問にも応答してこそ安全性が理解されると言えます。さらに、この地では、どのような発展の上にP3の研究に万全の安全策をとる予定か、その方策について第三者的な専門家を交えて住民に説明する機会を設けてください。
会社の考えから出た国内の研究所を統合することで効率が格段にアップするということは、だれでも分かる理屈でしょう。しかし、今回のアセス案〔=予測評価書案〕は企業側にとっての効率アップの案であって、近接して生活している住民にとって、環境の変化として受け入れ難いものがまだあります。その一つが、動物による生態実験と実験後の死体の焼却です。優れた薬品の研究開発の上では、確かに不可欠かつ重要な実験であっても、実験場所は慎重に選ぶべきです。バイオにしても、また動物実験にしても、周辺住民との合意形成が大前提になる事柄です。こんな当たり前なことを武田薬品が分からないはずがないと思うのですが、住民には重大問題であることを理解して、業務内容について説明する努力を会社に要請したいと思います。
先の2月に配られた予測評価書案の概要説明書、その4ページ冒頭の武田薬品の「環境に関する基本原則」8項目にかんがみ、バイオ関連、動物実験、及び植物・動物・生態系への予測評価に重点の置かれた説明会は、いまだ乏しく、是非新たに説明会を開催してほしいと思います。
それには新旧いずれかの研究所に実際に携わっている重役の方の出席もお願いしたいし、時期としては工事説明会の前に、かつ前回と同等以上の規模で開催されることを要望いたします。
2月に説明があった際に配布された予測評価書案の概要説明書の64ページには、審査意見書の内容として、「完成後の研究施設において多種類の薬品類や遺伝子組換え生物を扱うことから、事業者は環境影響評価手続を通して近隣住民へ十分な説明を行うことが求められている」と記述されております。しかし、見解書にあるような関連法規の遵守や自主的な管理体制という言葉だけで見解とされるのでは、近隣住民への十分な説明にほど遠いということを理解いただかなくてはならないと思います。


 県・市は住民の安全を第一とした対応を

以上述べました事業者説明に対する疑い及び要望は、あわせて神奈川県並びに藤沢・鎌倉両市に対しても、住民の安全を第一とした対応を求めての住民の要望であります。

大船フラワーセンターの花
 
(本稿は、2008年7月5日に行われた公聴会での発言に加筆していただいたものです。)